テレビ山梨番組審議会だより

第547回 番組審議会議事要録

開催日時
9月16日(火) 午後3時
開催場所
山梨県立やまなし地域づくり交流センター 大会議室
委員の出席

委員の総数 8名
出席委員数 8名
(書面の提出をもって出席 1名)

【出席委員氏名】
安達 義通  委員長
中島久美子  副委員長
浅川  徹  委員
佐藤  弥  委員
杉田 真一  委員
手島 俊樹  委員(書面)
伏見  彩  委員
堀内 麻実  委員

【放送事業者側出席者】
原田由起彦   代表取締役社長
金丸 康信   相談役
鈴木 淳郎   常務取締役
古屋 孝樹   報道制作局長
武藤 裕美   報道部記者
番組審議会事務局

番組審議会
審議事項
「スゴろくニュース」内の終戦特集

対象日 2025年8月12日(火)~15日(金)
18時15分~18時55分
審議、意見の概要
●教科書やメディアで若い人も戦争のことを知っているが、実際の体験者との対話から当時のことを引き出し、自分から能動的に戦争を捉えようとする良い機会になったんじゃないか。より深い平和への思いを伝えていくことにもなるんじゃないか。

●テレビは音声と映像という大変な強みを持っていて、見ている人の感情に訴えることができる。その人がどのように生きていたのか、何を思っていたのか、家族や恋人や友人や大切な人はどうしていたのかなど、戦争の影響や教訓を見ている人たちが深く考えて、非戦への想像力を引き出せるような番組をまた作っていただきたい。

●今年の特集は、従来の戦争そのものの悲惨さを中心に強く語るのではなく、戦時中の悲惨さを後世に残す活動や遺族らの思いに焦点を当てた放送だったと思う。戦後80年が経ち転換の時期に来たのではないか。

●ウクライナやガザの話を聞けば、戦争したくなくても戦争を仕掛けてくる国はまだ出てくるだろう。もし日本が仕掛けられたらどうするのかは報道でもあまりやらない。戦争は絶対嫌だし否定すべきだが、何か対策を検討し言葉にするべきじゃないか。

●戦争体験がない者がどのように語り続けていくべきか。同窓、地域、会社など何らかの縁があるものが世代を超えて行動することが大切だ。同窓会でも33回忌、50回忌に文集を作り記録を残しているが、語るのは今までなかなかなかったのでうまくつながっていけばと思う。

●満州での集団自決で奇跡的に生き残っていた方のインタビューは、中国語で話して同時通訳で放送されていた。そのことがより一層、生まれ育った故郷を離れて長らく日本に戻ってくることができず、人生が戦争によって変わったことを引き立たせているように感じた。

●戦争を若い世代に伝えることはすごく難しい。戦争の映画も怖くて見られないという方々が多い中で、どうやって興味を持ってもらい伝えていくのかがすごく大事なテーマになる。無言館のお話のように、違う視点で伝えていくこともすごく大事な要素になってくると思う。

●他局では画面上にQRを表示し戦争体験について情報提供を呼びかけていた。こういうことをしていかないと偏った情報が生まれやすいと思う。すぐに使えるし、今後の番組作りにもすごく役立つんじゃないか。

●同じ時代を生きた人たちでも、1人1人異なる思いや経験があるので、戦争体験のお話を伺うたびに毎回新たな気づきがある。1人1人の話を聞けなくなってしまうとステレオタイプとかワンパターンになってしまうので、実体験を今残していく重要性を教えていただいた。

●「天野さんら空襲の体験者から当時の話を聞き紙芝居にまとめた」という説明だったが、「天野さんら」ではなく、何人の証言を聞いたのかを示したほうが、よりリアルに取り組みが伝わったと思う。

●紙芝居の朗読会に参加した聴衆のすごく真剣な表情が、映像からすごく伝わってきて印象的だったので、その方たちの声も聞きたかった。取り組みへの客観的な評価、率直な紙芝居の感想、どんなメッセージを受け取ったのかという一言でもあると、特集のメッセージである「つなぐ、つながる」が伝わると思う。体験者と女子高生だけではなく、紙芝居を見た人につなげるという意味合いも十分このメッセージに入ってくる。紙芝居を通じて様々な世代に貴重な証言が伝わっていくことを、その方々のコメントで示すことができれば、より深みのある内容になったのではないか。

●郷土史研究家、中国残留孤児である生存者、開拓団の団長の息子さんと、それぞれ異なった視点からの話を盛り込んでいて、とてもバランスが良かった。実体もよく分かったので人選や作り方はすごく良かった。ただ、郷土史研究家の話が私にはバイアスがかかっている内容でミスリーディングしていると思った。郷土史研究家に引っ張られすぎず、もう少し時代背景を正確に伝える努力をしたほうが、さらに見応えのあるものになったんじゃないか。

●平和を考える際、終戦後に直面する多くの困難にもふれることは大事な視点であり切り口はよかった。シベリア抑留の凄惨な実態を私たちが実感するには、やはり体験者の生の言葉に勝るものはない。手記にあった多くの死者の埋葬のくだりなどは、視聴者の胸に響くものであり、戦争の悲惨さもだが、人権尊重を考えさせられる意義深いものだった。ただ、生徒が抑留者へ書いた手紙をセットで扱ったが、それを加えることによって視聴者に何を伝えたかったのかが不透明に感じられた。

●シベリア抑留体験者と手紙の物語と言われても、手紙の内容と、河西さんが晩年読みたがっていたという2つだけでは、情報が足りなかったのではないか。手紙に癒され励まされたであろうことは想像に難くないが、河西さん自身の言葉がないと物語は成立しないように思う。

●手紙を書いた生徒たちはシベリア抑留などをどう受け止めたのか、教師はどう語っていたのかなど、当時の学校教育という視点から取材をしてもよかったのでは。この手紙は終戦後の教育を知るうえで価値あるものであり、そうした視点から手紙を取り上げる構成もあったように思う。


以上