テレビ山梨番組審議会だより

第543回 番組審議会議事要録

開催日時
4月15日(火) 午後3時
開催場所
山梨県立やまなし地域づくり交流センター  大会議室
委員の出席

委員の総数 8名
出席委員数 8名
(書面の提出をもって出席 1名)

【出席委員氏名】
安達 義通  委員長
泉田 友紀  副委員長
浅川  徹  委員
佐藤  弥  委員
杉田 真一  委員(書面)
手島 俊樹  委員
伏見  彩  委員
堀内 麻実  委員

【放送事業者側出席者】
原田由起彦   代表取締役社長
金丸 康信   相談役
鈴木 淳郎   常務取締役
駒沢 克昭   取締役報道制作局長
生山 裕晃   編成局長
関谷 和樹   制作部ディレクター
番組審議会事務局

番組審議会
審議事項
「テレビ山梨開局55周年記念特別番組
  叔母と姪 ~幸せとは何ですか?~」


対象日 2025年3月20日(木・祝)
10時00分~11時00分
審議、意見の概要
●ナレーションは映像の場面説明にとどめて、心情や言動を解説することは避けたほうがよかった。もっと視聴者自身がその姿や言動から自由に感じ取ることを大切にしたほうが良かったのではないか。

●お二人の関わり方はある意味恵まれた要素があった気がする。身寄りがいなかったりあるいは認知症になってしまったりと、様々な困難に悩む方も大勢いる中での「幸せとは何ですか?」という問いかけは、いささか配慮に欠けた面があるように受け取れた。

●視聴者に向けたメッセージはどういうものだったのか。先生の一代記としてじんわり感動できるいい内容だと思うが、頼るあてのない独居の高齢者は世の中にたくさんいる。この番組のメッセージが「これから年をとっていく皆さんも昔はあれができたのにこれができたのにとばかり考えるのではなく、今支えてくれる皆の存在、今ある幸せを感じて生きていきましょう」だとすると、世の中のもっと恵まれない人たちとのギャップを感じた。

●働く女性が増えて視聴者の中でもいろんな悩みを抱えている人たちがいるのではないかと考えたときに、“生涯現役宣言をした女性の仕事の引き際”をリアルに映し出していたのは、良くも悪くも良かったが、仕事一筋で生きてきた女性の最終章がすごく寂しく感じ、若干モヤモヤが最後に残る番組だった。「働く女性も家庭や地域を大切にする女性も、いろんな生き方をする女性がどんな形でも幸せである」「対照的な2人だけどこういう形で支え合って生きる、これもまた幸せだよね」みたいなものがもう少し見えてくると、見ていて幸せな気持ちになれたと思う。

●長期的な取材で、番組全体に重みも感じられてメッセージ性も伝わってきた。こういった地域に密着したドキュメンタリーはこれからもたくさん制作してほしい。

●水と油の関係であることを随時強調しながらも、最後に2人とも笑顔で終わった。視聴者はその笑顔を見ながら、自分の幸せについてすごく考えさせられるドキュメンタリーだったのではないか。

●数年間にわたってカメラを回し、ふんだんな映像によって伝えられる場面の多くが非常に印象的で、丹念に暮らしを追ったいいドキュメンタリーだ。

●美容院が盛って衆目を集めていた頃の名取さんは、そのことが高いステータスであり、幸せだったかもしれないが、五十嵐さんの人生とも対比させ、「幸せとはその時その時の人生に意味や意義、目的を見いだして行動することではないか」と投げ掛けているのかなと思った。

●最後の場面で五十嵐さんが名取さんに手を添えながら、逆光の中で山門をくぐり抜けていった、哀愁漂う2人の背中の映像がとても印象的だった。制作側の意図がこの場面だけでも酌み取れたように感じた。

●華やかな人生から1人ではほぼ生活もままならない状態に追い込まれていた彼女にとって、幸せではない人生の終末期を迎えるしかないのか、どのように感じて生きていくのかというのを、結果的に問いかけられた3年間の取材だったのかなと思う。喜美枝さんも有子さんが出現したおかげでだいぶ幸せの感じ方が変わったのではないか。

●現代社会の未婚化、高齢化、少子化、若者の大都市への移住。そういった中で家族、親戚による介護のあり方を基本的なメインテーマにしていた。これはますます重要なテーマとなってくるので、大変時宜を得たドキュメンタリーだ。この番組は視聴者に介護も含めてこういうことを自分事として考える機会を与えていて、大変意義のあるものだ。

●多くの人の関心を呼ぶような番組名にしたほうがいいし、「幸せとは何ですか?」という副題にはやはり違和感を持った。「叔母にとって幸せだし姪にとっても幸せなんだ」ということを意図したと思うが、「ちょっと違うんじゃないのか」と思った。本当はずっと美容師の仕事をしたかったし、介護することは不幸せではないと思うが幸せではないと思う。全体の構成として、叔母と姪という構図で作るよりも、人生に春夏秋冬があって、冬の時期になったときに、他者、つまり家族や親戚とどう関わるのか、関わらなきゃいけないのかということをメインテーマにして番組名をつけたほうが、グッとくる度合いがもっと強かった。

●有子さんのストレートな言葉と裏腹に、叔母への行動に愛情を感じられたのは、2人を上手に対比した取材・編集の技量と言える。

●有子さんの終活の手伝いや叔母との接し方が、高齢の親族と接する際にプライバシーを尊重し互いに生きやすいよう、支える側が疲弊せずに続けられる参考になった。


以上