■サイエンス基金受賞者による「なるほどサイエンス」■

平成12年12月29日 掲載

人の話の聞き方と聴き方−共感的な理解とは−


山梨大学 吉川 眞理
(テレビ山梨サイエンス振興基金第8回受賞)

 私たちはそれぞれに自分独自のものの見方、ものごとの判断基準となる照合枠をもっています。それは生まれて以来の経験の積み重ねにより形成されたものであり、決して固定的なものではなく、日々の経験により、修正され続けます。
 私たちは人に出会うと、まず自分の内的照合枠に基づいて相手に対して何らかの判断や評価を下して付き合おうとします。
 一般に社会生活では、人の話を聞くときには、「この人の言うことは信用できるかどうか?」見定めながら聞き、さらに、相手の意見を聞きながら「正しいかどうか?同意できるかどうか?」判断し、必要ならば反論を展開することが求められるのです。
 しかし、この聞き方と全く別の聴き方があります。それは、相手の内的照合枠に注意を向けて聴く聴き方です。相手の言葉から「相手の目には、この状況はどんな風に映っているのか? 相手は今、どんな気持ちでいるのか?」を聞き取っていきます。
 心と心が通じ合うコミュニケーションのためには、このような聴き方が大きな役割を果たします。
 カウンセリング理論を構築したカール・ロジャースは、この聴き方について「相手の内的枠組を、あたかもその人自身であるかのごとく、しかも、ごとくという条件を失うことなく、正確に、かつ付随する感情と意味を伴って、感じること」と解説して共感的な理解と名づけています。大変な集中力が必要とされますが、誰でも試してみられる聴き方です。一度、この聞き方で身近な人の話に耳を傾けてみてはいかがでしょう?