■サイエンス基金受賞者による「なるほどサイエンス」■

平成12年8月25日 掲載

「女らしさ・男らしさ」から「その子らしさ」へ


県立女子短大 池田 政子
(テレビ山梨サイエンス振興基金第7回受賞)

 ある保育園でのできごとです。三歳の男の子が、それまで登れなかったジャングルジムのてっぺんに、がんばって登りました。そして、こう叫んだのです。「女の先生はのぼれないんだぞー!」
 まだ生まれて三年にしかならない男の子が、自分(男)はできても女は出来ないという「男性優位」の意識を、しかも大人である女性の先生に対してさえ、強く持っているということ、驚きです。
 幼児は三歳くらいになると、自分の性別を意識するようになります。そうなると、今度は、世の中にある性別に関わるたくさんの情報の中から、「女」または「男」に関する情報を選択的に取り入れていきます。自分は男の子だ、だから男のすることをしよう、というわけです。
 テレビアニメ、絵本、家庭でのしつけ、幼稚園や保育園での保育者の対応、あらゆるものが幼児の「女らしさ」「男らしさ」の情報源・モデルになります。ですから今の社会の「女らしさ」「男らしさ」の基準が、すべて幼い子供に受け継がれてしまうということなのです。
 男は青色、男は泣かない、男は強い……。それは当然「女はそうではない」という意識も作っていきます。このように、生まれ育つ過程での学習によって身につけてしまう「性差」を「ジェンダー」とよび、生殖器などの生物学的な性差と区別しています。
 昨年六月、「男女共同参画社会基本法」が制定されました。子供たち一人ひとりが、女だから、男だからという枠に縛られることなく、その子の力を十分発揮して生きられるような社会でなければ、これからの少子・高齢化社会を乗り切ることは出来ません。幼児に、性差の不必要な強調をせず、性別と優劣を結びつけないような情報や環境を整えることは、私たち大人の重要な責務ではないでしょうか?