■サイエンス基金受賞者による「なるほどサイエンス」■

平成12年8月11日 掲載

日常生活と看護学


県立看護大学 高橋 美紀
(テレビ山梨サイエンス振興基金第9回受賞)

 患者さんが入院するとき、多くの病院で看護婦が患者さん本人やそのご家族に、患者さんの生い立ち、あるいは普段の生活の有り様などをお聞きしています。入院となると、手荷物を用意したり事務手続きに駆け回ったり大忙しですから、看護婦からいろいろと聞かれるのは億劫に思われることもあるでしょう。このことがなぜ必要かを看護学的に考えてみましょう。
 看護学では、人間は生まれてから今日までの毎日の生活のなかで、無数の人々との直接・間接の関わりのなかで、その身体も心もつくられていくという人間の捉え方をしています。人間は生活に必要な生活物資を一人では供給できませんし、その人らしい感じ方や考え方といったものも他人との関わりや文化的な活動を通して培われていくことをイメージしていただければよいでしょう。
 看護学では、身体や心に起きる個人の病気もまた、遺伝的に受け継いだ体質のみならず、今日までの毎日の生活の中でつくられてきたものという発想をします。
 ですから、看護する時には、この人は今までの生活により現在のような健康上の問題を抱えているけれど、より、健康的に生を全うするためにはどのように生活を変えていけばよいだろうかという観点を重視します。入院時に看護婦からいろいろと聞かれることも、そのためのこととご理解いただけたら幸いです。