■サイエンス基金受賞者による「なるほどサイエンス」■

平成12年6月9日 掲載

免疫の本質−自己と非自己−


山梨医科大学 吉川 英志
(テレビ山梨サイエンス振興基金第9回受賞)

 免疫系は、無意識のうちに自己と非自己を認識し異物から自己を守ります。自己にとって悪い細菌を排除しますが、一方で他者の善意による移植に対してさえ、当たり前のように拒絶反応を引き起こします。自らの身体より発生し、一見自己と思われがちな癌細胞に対しても、決して自己の利益を基準に反応が制御されるのではなく、その本質は自己と非自己の区別にあります。
 最近、自己と非自己の認識による免疫監視について、細胞内外での認識機構が明らかとなり、免疫系の謎がまたひとつ分子のレベルで解明されようとしています。
 しかし、時に免疫系は自己と非自己の認識を誤り自己に対して攻撃したり、異物に対する過剰反応が自己を巻き添えにすることで、自己免疫疾患やアレルギー性疾患を引き起こします。これら免疫系の破綻による疾患発症の機序は、いまだに十分に解明されていません。今後これらに対する基礎研究はもちろん、疾患の治療を視野に入れた総合的な研究の発展に期待がよせられています。